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薄桜鬼10周年記念 その参「斎藤一」

はじめに

ここでは、オトメイト様より発売中の「薄桜鬼」をもとに小説を作成しています。アニメ版薄桜鬼やファンソフトは未playなため原作寄りです。
版権の二次小説に関しては著作権はゲーム会社にありますが、文章及び、表現内容に関しては当サイト管理者である皐月うしこにあります。リクエスト等は受け付けてません、キャラ違い等の苦情も一切受け付けませんので、ご理解下さい。
基本的に千鶴総受けですが、甘さは濃くありませんので、濃厚な内容をお求めのかたは戻られることをオススメします。

名前変換もありません。

とにかく、趣味の範囲で作成してますので、ご理解お願いします。

小説:不思議な屯所

視点: 斎藤 一

──転ぶ。

「きゃっ」

わかっていたから咄嗟に支えたが…

「あっ、斎藤さん。ありがとうございます」

──何故、転ぶ?

雪村千鶴。確かに彼女、いや、その存在を隠しているために彼というべきだろうか…
とにかく、雪村がきて一週間が立つのだが、どういうわけか雪村は、必ずこの場所で転ぶ。毎日決められた時間のみ自室から出れる。監視役は、俺だ。
たしか、屯所に連れてきたあの夜から雪村は、この場所で足をとられていた。

「あの…斎藤さん?」

どうやら考えこんでいたらしい俺は、慌てて雪村を解放した。

「気を付けろといつも言っているはずだが?」
「すみません」

本当にすまなさそうに謝る雪村にこれ以上、何も言う気になれずに、ただ息がこぼれた。
一週間続けて同じ場所、同じ間隔でつまずくものなのか?
それとも、俺が気付いていないだけで、この板がせりあがっているのか?

「どうもありがとうございます」

自室まで送り届けた雪村になんとか返事をするが、俺の意識は依然、あの廊下にむいていた。

──わからん。

他の隊士の反応を観察してみたが、これといって変化はない。では、あいつがただ鈍臭いだけなのか?
しかし、七日続けて自然に転ぶとは考えにくい。ましてや毎日のように注意してやっていると言うのに…

「わからん」
「一くん?どうしたの?難しい顔しちゃって」
「…平助か」

声から平助とわかるが、ただ通りがかっただけであろう。振り向く必要は、ない。
それよりも先に、こちらの問題を片付けなければ。

「一くん?」
「平助、そこを歩いてみろ」
「ん?」

首をかしげながらも平助は、俺の指定した箇所に向かっていく。

「これで、いいのか?」
「違う。逆だ」
「??」

──やはり何も問題がないように見受けるが。

「おっ。平助!なにやってんだよ?」
「斎藤もいるじゃねぇか」
「新八っつぁんに、左之さん。…どっか行くのか?」
「おう」
「平助も誘ってやろうと思ってよ」
「まぁじで。行く行く。一くんは?」

三人の視線が向けられるが、おおかた島原にでも行くのだろう。興味がない上に、今は問題を片付ける方が先だ。

「俺は、いい」
「そうか?」
「んじゃ、まったなぁ」

結局、平助に手伝いをさせたものの答えは得られなかった。では、一体何が原因だと言うのか。
試しに、歩いてみた。

「やはり、他と変わらん」

逆から歩いてみるが、やはりわからない。

「そうか」

雪村の歩き方で歩いてみれば、わかるだろう。

「……」

…特に何も問題がないように思えるのだが。

「一くんは、さっきからそこで何やってるのさ?」
「今度は、総司か」

さっきからとは、いつからだ?まさか、この俺が気づかなかったとは……

「珍しいね。考え事?」
「どう思う?」
「何が?」
「床」
「床?」

ゆるく総司は首をかしげるも、「何もないように見えるけど」と、至極まっとうな答えがかえってきた。

「俺もそう思う」
「…何それ?」

付き合ってられないと鼻唄を歌いながら総司は行ってしまう。
気まぐれなやつだ。
しかし、観察力は信用できる。

「何もない。か…」

では、何故この場所でこけるのだ?
いつもは俺がいるから大きな怪我には繋がらないが、一人で歩けば…怪我をしても困らないはずだ。個人的には。
だが俺は、雪村を監視する役を受けている。俺が傍にいる以上、何かを起こさせるわけにはいかない。
大体ここは、隊士たちも通るのだ。俺が問題を解決したいのは、決して雪村だけのためではない。

断じて違う。

何故つまずくのかが気になるだけで。俺が傍にいられない時でも転ばぬように…と。あのあと、結局答えが出ないまま日がすぎた。今日も雪村は、自室から出ると少し後ろをついてくる。
見る限りいつもと同じだ。
緊張感もなければ、もうすぐ例の箇所に差し掛かると言うのに、特にこれといって気を付ける様子もない。また、転ぶのだろう。

もうすぐ…

あと一歩。

「……」
「あの、斎藤さん。どうかしたんですか?」

……何故、転ばない。
支えようと振り替えって、手を広げてしまった自分がいた。これでは、いつも雪村を気にかけているようではないか。

「斎藤さん?」

雪村が首を傾げて、ハッと気付く。
どうやら、そのままの体制だったようだ。
小さく咳払いをして誤魔化す。

「なんでもない。行くぞ」
「えっ?あっ…はい」

慌てて雪村が背を向けた俺のあとに続く。

「っ、きゃっ」

雪村の声に驚いて振り替えれば、総司の腕にかかえられた雪村がいた。

「千鶴ちゃん。大丈夫?」
「あっはい。大丈夫です。ありがとうございます」
「もぅ、一くんもひどいよね。監視役ならちゃんと見といてあげなよ」
「…すまん」
「あっいえ…自分がつまずいただけなので」

確かに総司の言う通りだ。
俺が雪村を守る役をいただいたのだ。
たった一人の女の監視もこなせないと言うのなら組長など勤まらない。

「今日は、ここか」
「えっ?」
「なんでもない」

先を急ぐ俺に、沖田の手の中で雪村がもがく声が聞こえた。

「は…離してください」
「え~。千鶴ちゃんから僕の腕の中に飛び込んできてくれたのに?」
「そんなっ…」
「僕のこと、嫌いなの?」

うっと言葉に詰まる雪村が信じられない。嫌なら突き飛ばせばいいだろう。総司は、ただからかっているだけなのに真面目に受け答えしようとしている雪村に驚く。

「総司のいうことをいちいち間に受けるんじゃない」

助け出してやれば、「えっ?」と、雪村は首をかしげた。
人を疑うことを知らんのか?
この様子では、男ばかりの屯所内で危険なのは嫌でも想像できる。常に見ておいてやらねば。
雪村が気になるんじゃない。
ただ、それが俺の仕事だからだ。

「一くんは、ずっと千鶴ちゃんと一緒で羨ましいよね」

……羨ましい?ならば変わってくれれば…いや、総司は危険だ。
やはり他の誰にもまかせられない。
俺が守ってみせる。

《完》

あとがき

そろそろあれです、三本目になってくると開き直るパワーが出てきましたよ。笑
真面目男子が見せる真面目な部分が可愛い。はじめに書きました通り、苦情は受け付けませんのでご査収ください。