薄桜鬼10周年記念 その陸「風間千景」

はじめに

ここでは、オトメイト様より発売中の「薄桜鬼」をもとに小説を作成しています。アニメ版薄桜鬼やファンソフトは未playなため原作寄りです。
版権の二次小説に関しては著作権はゲーム会社にありますが、文章及び、表現内容に関しては当サイト管理者である皐月うしこにあります。リクエスト等は受け付けてません、キャラ違い等の苦情も一切受け付けませんので、ご理解下さい。
基本的に千鶴総受けですが、甘さは濃くありませんので、濃厚な内容をお求めのかたは戻られることをオススメします。

名前変換もありません。

とにかく、趣味の範囲で作成してますので、ご理解お願いします。

小説:風間さまの日常

視点:風間 千景

一体、こんなやつらのどこが良いと言うのだ。西の鬼を率いる俺の誘いを断ってまで、傍にいたいと思わせる新選組とやらを数日間、監察してはおるが、「やはり、所詮人間ではないか」儚くて、もろく、浅はかで卑しい生き物。
幾度となく、あいまみえてみたが、たいした腕はもっていない。

「いずれ、この俺のものになるのだ」

焦る必要は、ない。
だが、そろそろ身を固めねば周りがうるさい。それをかわすのにも疲れた。適当な女に、興味はない。かつて、東の国を治めた雪村の娘がどんなものか。

純血の女鬼。

俺の子を産ませるには、ちょうどいい女。申し分は、ない。もちろん、あの雪村千鶴とやらも、そう思っていると、思っていた。俺の子供を産みたいと望んでいる──はずだったのだ。

「あやつらさえ、いなければ」

千鶴は、新選組どもに押し付けられたと見受ける雑用を淡々とこなしている。

「鬼ともあろうものが、呆れてものも言えんな」

そんなに楽しいとも思えんが、鼻唄を歌っているあたり、苦ではないのだろう。

「中庭で一人とは……」

仮にも、この俺が幾度となく足を運んでやっているというのに、警戒心の欠片もないのか?
いや、鬼ともあろうものが易々とやられるほどではないが……。

「いささか、無防備に見える」

パシャパシャと水を跳ねさせながら、新選組の汚れた服を洗う。ときどき、桶からそれをあげれば、一人満足そうに笑う千鶴がそこにいた。

「守ると言いながら、全然守ってないではないか」

守るとは、傍にいること。常に危険を回避してやるということでは、ないのか?

「だから、やつらにはまかせておけんのだ」

奥歯が噛み締められる。
口だけ偉そうなことを言えば、
この有り様。
いまここで、この俺が襲撃しようものなら、誰にも気付かれることなく連れ去れるというものだ。

「はぁ」

とりあえず、あの洗い物とやらを終えるまでは、待ってやろうか。そう思い、少し体勢を整えた時だった。

「ちっずる~」

あれは、たしか。

「あれ?平助くん。どうかしたの?」

そうだ、”平助くん”だ。

名前は、たしか……藤堂平助といったか?

「いや、左之さんたち見なかった?」
「ううん、見てないけど」

“左之さん”とやらは、たしか不知火が言っていた原田左之助のことだろうな。永倉新八も含めてよく一緒にいる、無償にうるさい三人組。

「そっかぁ。じゃあ、いいや」

なぜ、そこで千鶴の傍に腰かけるのだ?

「お~、平助。何やってんだ?」

そしてなぜ、すぐにお前たちは集まる?

「左之さん、あっ。新八っつぁんもぉ」
「くぉら、平助!この俺様をついで呼ばわりたぁ、いい度胸してんじゃねぇか!」

……。

「うるさい」

俺と同じ言葉を口にしたのは、斎藤一か。そういえば、天霧が妙に褒めていた気がするが。さして、他と違うようには見えん。

「みなさん、休憩ですか?」

千鶴の問いに、頷くあいつらに聞きたい。

「なぜ、手伝ってやらんのだ?」

いや、そもそも千鶴がする必要などないではないか。千鶴がするのは、この俺のことだけでよい。自分のことすら、満足に出来ないやつらが、この俺よりも勝っているなどと絶対に認めん。

「雪村、手伝う」

ほう?
さすが天霧が褒めただけはあるな。

「斎藤さん、大丈夫ですよ。もう、しまいですから」
「そうか」

笑いあう二人が面白くない。
千鶴がそれでいいのなら、いいのだが。
俺に見せたことのない笑みを新選組のやつらに見せてやるのは、なぜなのだ?

「どこが違う」

疑問が渦をまいていると、ドタドタとやかましいふたつの足音と怒声。

「…ああ」

これは、もういつも通りの展開か。

「総司!待ちやがれ!」
「あはははは。嫌ですよぉ」

鬼よりも鬼らしいと言われる土方歳三と、新選組一の剣客と言われる、沖田総司か。俺からしてみれば、どちらもとるにたらん。
ただの人間だがな。

「一くん、受け取って」
「断る」
「え~。じゃあ左之さん」

はいっと笑顔で沖田が飛ばしたもの。

「なんだ、あれは?」

土方が青い顔をしたあたり、よほど他の手には、触れられたくないものなのだろう。

「おっ?なんだぁ」

受け取った原田とやらも首をかしげている。見たところ書のようだが……。

「てめぇら!絶対に見るんじゃねぇ!」

そんなに大事なものなのか?
ならば、すぐに返してって……
土方から原田に視線を戻そうとした途端に沸き上がった笑い声に驚いた。

「きみいとし
どうしてそんなに
かわいいか?」

「ぎゃはははは。なんだよそれぇ」
「季語もなけりゃ、字余りじゃねぇか」

原田の声に、藤堂と永倉が腹をかかえる。

「やだなぁ。土方さんの句集ですよ」

沖田の声が響けば、ピタリと止まる笑い声。土方の顔が、青から赤に変わってうつむいた。

「やっやばいんじゃない?」
「おっ俺のせいじゃねえよな?」
「左之が、勝手に読んだんだろっ」
「持ち出した総司も悪い」
「え~。ひどいなぁ、一くんは。ねっ、千鶴ちゃん?」

ビクッと体を震わせた千鶴に気付く。

……。

ああ、またか。

「てめぇら、今日こそは、その性格を叩き直してやる!そこに、なおりやがれ!」

土方の怒声で、蜘蛛の子を散らすように解散していく。そして、やはり千鶴も持っていかれた。

「はぁ」

毎日、本当によくやるものだ。
あいつらには学習能力がないのか?

それとも、わざとか…。

人間の考えることは、どうにも理解できない部分が多い。

「それにしても…」

置き去りにされた洗い物と放り捨てられたと見られる句集を見ながら思う。

「剣だけではなく、句の才能もないのか」

救えないやつらだ。
どれ、ひとつ手本でも見せてやるか。

「ふりむけば
いつでもそこに
おれがいる」

我ながらよい出来だ。

「…風間さま…時間です」
「聞いていたのか?天霧」
「いえ」

現れた男は、こういうやつだ。

「ふんっ。まあ、いい。行くとするか」
「今のは、千鶴さまに?」
「!?」

やはり、聞いておったのではないか!
この怒りは、原因となった新選組のやつらにむけてやる。

《完》

あとがき

ほのぼのしてまいりましたね。鬼とか角とか妖しの存在は大好きなので私もいつか鬼の話を書くぞと意気込んでおります。風間様の美しさにはかないませんが、お機会ございましたらぜひ私の小説も読んでみて下さい。