秘めた愛憎

眠る少女の傍らで、嫉妬にまみれた瞳が熱に揺られて怪しく光っていた。

「お嬢様。本当はずっとお慕いしております。」

鋭い眼差しと、優しい声。そっと口づけられた唇の重なりは月さえ知らない。
明日もまた、日常という潔白の仮面を張り付けて、彼は静かに笑うだろう。
#140文字小説

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タイトル『秘めた愛憎』

決して悟られてはいけない。
思わず欲情してしまうことがある。他の男と楽しそうにしていると嫉妬にかられることもある。
自分のことをただの使用人としてしか見ていないことに腹が立つこともある。
そんなことは、従者として雇われている身としては許されない。

ボディーガードでも、執事でも、その両方でも違っても。幼少期から傍にいる彼の存在は、少女にとっては家族、いやそれ以上の存在かもしれなかった。男と女の関係ではなく、親愛で結ばれた関係。裏切りたくはない。

それでも無防備な寝顔に、複雑な思いは募りに募り、ついに寝ている少女の唇を彼は奪ってしまう。
月さえ寝静まる真っ暗な室内で、欲望に犯された男の顔を少女はきっと知らないだろう。

翌朝、何ごともなく彼はいつも通りの笑顔で振舞う。

自分はいつでも貴女の味方ですよ。
自分はいつでも貴女を尊重しますよ。
自分はいつでも貴女を思っていますよ。

だけどあなたは気づかない。

慕われていることを。
嫉妬されていることを。
見つめる彼の瞳が、使用人ではなく男の色だということを。

いつかそれを無理矢理教え込まれる日がくるのでしょうか。それとも貴女は別の誰かを探すのでしょうか。
嫉妬に狂った従者に犯される感覚は、もうすぐそこに迫っているかもしれません。
彼はまだかぶったままでいるだけなのです。潔白という名の仮面を。
あなたとの何気ない日常を楽しんでいるだけなのです。