神様の御用人7:瑠璃の月だけが知る神々の悲劇があった
メディアワークス文庫から出版されている「浅葉なつ」著者の「神様の御用人7」を読みました。
古事記や日本書紀を由来とするファンタジーのお話ですが、このシリーズ、私めっちゃ好きなんです。
今日、ようやく読み終わりましたので、その感想をこちらにて。
もちろんネタバレが含まれますので「まだ読んでないぞ」という方は、ぜひブラウザバックで戻られることをお勧めいたします。
さて、神様の御用人7は「月」「日本昔話」「悲恋」という切なく、悲しい中に美しい世界観が練り込まれた作品でした。
・ファンタジーが大好き
・神社仏閣巡りが大好き
・月が好き
といった方には、シリーズの中ではドストライクな題材ではないでしょうか。
ベースは、あの有名な三貴子。
天照大御神(あまてらすおおみかみ)、月読命(つくよみのみこと)、須佐之男命(すさのおのみこと)です。誰もが一度は名前くらい聞いたことのある有名な神様ですね。
太陽の神と月の神と海の神。
日本神話の中でもとりわけ有名な三姉弟だと思いますが、今回はその三姉弟の物語と、かぐや姫、天岩戸物語の話が絡み合っています。逆にモフモフの神様、主人公:良彦(よしひこ)と一緒にいる方位神こと「黄金」の登場はそこまで多くはありません。
あのボケとツッコミの会話が今回は少ないのですが、その分、大国主神(おおくにぬしのかみ)がいい味を出しています。普段チャラチャラした女遊びの激しいイケメンが、真剣に心配してくれて、実は胸の中で色んな葛藤をしていることが垣間見えるそのギャップに、私はかなり心をうたれました。
もともと好きなキャラでしたが、惚れそうです。
奥様である須勢理毘売(すせりびめ)に殺されそうですね。
何かと登場の多いこの夫婦を好きな方もいらっしゃるのではないでしょうか、私も大好きです。
話を戻しましょう。
有名な三神の中でも、今回の主人公は「月読命」でした。
日本書紀と古事記に関する不明確な記述の解明、かぐや姫の逸話に隠された真実、須佐之男命のみせる深い愛、姉としてではなく立場に縛られた天照大御神。そして、すべての記憶をなくした月読命。
今では一日しか記憶を保つことができない月読命に、御用人である良彦はある御用を依頼されます。
それはやがて、神々が隠してきた悲しい過去へと繋がっていくこととなりますが、浅葉先生の描かれる世界観と表現力に泣けます。
太古の神々に仕向けられた罠にはまった三姉弟は、その昔、悲痛な記憶を背負い現在まで封印してきました。
事情知る神々は口を閉ざし、解決策を見つけられないまま、誰もが見てみぬふりをし続けてきました。
今回もまた、御用人である良彦は勇気をだして立ち向かい、神様との距離を縮めていくのですが、最後はハッピーエンドですので、読んでいて心温まる内容となっています。
一部、月読命×かぐや姫は悲恋なのでハッピーエンドというわけではないあたりが、また胸に何とも言えないものを与えてくれますね。
興味がわいた方、まだお読みではない方にはぜひおすすめします。
「神様にだって秘密はある!」
神様の御用人(かみさまのごようにん):浅間なつ 著
余談ですが、めちゃくちゃタイプの神さまが登場しました。
その名も、思金神(おもいかねのかみ)。腹黒で頭の良い忠臣。まじで結婚してほしい。