彼岸花の横顔
支えようと伸ばした手を思わず握りしめる。
「待っててね。もう少し、だから。」
今にも崩れ落ちそうな面影に、必死で笑顔を作るその姿に、何も言い返すことが出来なかった。
「うん。」
無力だと、ただ見つめることしか出来ないのかと、噛み締めた唇にわずかな血の味が滲んだ。
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ツイッターの「#140文字小説」に投稿した内容を深掘りするコーナー
タイトル『彼岸花の横顔』
こんにちは、皐月うしこです。
彼岸花の季節はもう過ぎ去ってしまいましたが、なんだかタイトルに悩んだ時にパッと浮かんできたのでそのままつけてしまいました。
男性視点なのか、女性視点なのか、どちら目線の小説なのかをわざと曖昧にしています。
始まりの会話文の語尾を「ね」にしたことで、女性を見つめる男性側の心情を描いたものだと受けとった人も多いかもしれませんね。
支えようと伸ばした手を握りしめたのは、目の前の人を尊重して、自分の欲を押し殺したイメージです。
・病気で余命わずかなのか
・ケガで大事な場面に影響が起きそうなのか
・仲間に必死でついていっているのか
相手の頑張りや苦しみを共感して、心の中では支えたい。
でも、支えることが相手を傷つけてしまうのではないかと不安になり、手を出せない。
考えだけが頭の中をぐるぐるとめぐって、結局何もできない歯がゆさに苦しむ。
そういう自分に苛立ち、無力だと唇をかみしめる結果になったのでしょう。
これがコメディだったら・・・というのも考えてみました。
お腹が痛く、トイレまで間に合わない。
すぐ目の前にあるはずなのに、混んでいるのか、清掃中なのか、壊れているのか・・・悶絶の相手をみて何もできない自分が情けない。てきな。
ギャグ漫画とかでありそうなシーンですが、それは読み手さんにの想像にお任せします。
そう考えてみると、このパターンの文章は色んな場面に当て込めますね。
140文字だからこそ広がる世界。
面白いです。