親愛のセレナーデ
モノトーンの鍵盤を叩いていると、いつも浮かぶ情景がそこにある。
「あなたが弾くとまるで物語ね。」
あの人は確かにそう言っていた。これだけ灰色に染まった世界の中で、瞼の裏に映る譜面だけが鮮やかに色づいている、と。
語りかけてくる音楽が温かで美しい、と。
————————————————————
ツイッターの「#140文字小説」に投稿した内容を深掘りするコーナー
タイトル『親愛のセレナーデ』
ピアノの音ってすごく好きです。
私も五歳からピアノを習い、ピアノの音が身近にあったので、とても耳に心地のいい音の一つでもあるのですが、今ではピアノに触れる機会も少なく、まったくといっていいほど鍵盤に触れていません。
時々、とても恋しい気持ちになります。
特に、寒くなってくると弾きたくなりますね。
小さなころはピアノで感情表現をしていたそうなので(自分ではまったくそのつもりはありませんでした)、今でも何かの感情を訴えたい場合は、無性にピアノを弾きたくなるのかもしれません。
それをパソコンのキーボードにぶつけているのでしょうか。
創造する楽しみをもちながら、既存した創作物に触れたくなる衝動に駆られる。
漫画、アニメ、絵画、詩、音楽、など「芸術の秋」と呼ばれるのもうなずけます。
きっと感情が一番、作品にのってくる季節なのかもしれません。どうしてこのような感情に心が支配されるのか、何か人間と気候のメカニズムがありそうな気がしますが、いえ、実際にあるのですが・・・そういうところを知ったうえで、あえて違うものを想像してしまうのが私です。
そんなこんなで、衝動に駆られて描いた作品が上気の小説。
ひたすらに鍵盤をたたき、音楽を紡いでいくからこそ、離れていく人もいれば、言葉にできない思いがある。
音という心に響かせる旋律は、ときに、言葉や声よりも聞く人の心に突き刺さるものでもあります。
言葉よりも音楽で伝える。
そういう人も世の中にはたくさんいますね。
同じ曲でも弾く人、聞く場所が違えば違う物語になる。
同じ物語でも、読む人の気持ちによって違って受け止められるように、作者の意図とは別に、物語は様々な色を持って世界を創造してくれます。
やっぱり素敵ですね。
自分の作ったものが、誰かの人生の中で色づくなんて、まるで魔法です。
もうすぐ紅葉の季節も本番を迎えますが、秋の季節だからこその作品をひとつでも多くお届けしたいと思います。