40秒朗読小説『終末の歌姫』
こんにちは、皐月うしこです。
YouTubeで動画の第二作品目となります。
40秒でさくっと終わるオリジナル小説を朗読という形で提供しています。
連作:終末の歌姫
「終末の歌姫」物語の内容
彼女の声は、荒野に咲く一輪の薔薇のように美しく。その声が奏でる歌は、まるで天から降り注ぐ恵みの雨のようでした。優しく、柔和に揺蕩う音色は、すさんだ人々の心を癒し、繰り返す戦をおさめ、平和の祈りを緩やかに染み込ませていきます。やがて、人々は彼女を「終末の歌姫」と呼ぶようになりました。
けれど、彼女は幸せではありませんでした。彼女の歌は彼女の祈り。幸せを願う彼女の心が歌になり、風にのって平和を運んでいただけなのです。それなのに、人々は彼女に平和を強いるようになりました。不幸や不運は彼女の歌が足りないからだと、世界中に届くほど大きな声で歌っていないからだと責めました。
姫は高い高い塔に閉じ込められ、毎日毎日人々のために歌い続けました。雨の日も風の日も、歌声が人々を癒すように願い続けました。そうして何年か後、彼女の歌声が聞こえなくなりました。けれど、平和はなくなりはしませんでした。姫が歌い続けた祈りは、今では誰もが口ずさむようになったからです。
姫はとても幸せでした。世界が歌声で満ち溢れ、誰もが平和を願っていました。もう誰も一人では歌っていません。一人で戦うこともありません。呪縛のような願いはどこにもありませんでした。高い高い塔を見上げると、不思議なことに、時折髪の長い美しい女性が綺麗な音色を奏でる姿が見えるそうです。
「終末の歌姫」の裏話
どこか切ない感じのファンタジーを作りたいなと思いました。ハッピーエンドではないけれど、おとぎ話のような童話のような余韻の残る作品をつくりたかったので、今回はですます調で作成してみました。
前回の魔女とはまた少し違う世界観をお届けできたのではないかと思います。
ちなみに背景画像はスマホで撮影した風景。写真を撮るのが下手糞だと定評があるのですが、なかなか綺麗な夕焼けだと思いませんか?(自画自賛。笑)
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今後もよろしくお願いいたします。