新刊予約スタート「ありふれた魔女たちの日常」
こんにちは、皐月うしこです。
ついに人生初のオリジナル本の販売がスタートしました!!早速ご購入いただいた方、ありがとうございます。
今回は魔女に焦点をあてた、魔女ばかりのお話を収録した作品になります。全部こだわりのお話ですので、ぜひお手元におむかえください。
☆初回15冊限定☆
「ありふれた魔女たちの日常」
全8話収録
》》 購入する
人気の作品を収録
今回収録しているお話は、全部で8つ。
Youtube限定であげたお話や、コラボした魔女のお話。Twitterで人気のタグに答えたものなど色々!
(収録作品)
・百年待ちの魔女
・魔女集会で会いましょう
・喫茶店で冷めないコーヒーを
・見習い魔女の秘密のレシピ
・閉じ込めたいほど愛している
・魔女になりたい男の子
・私が魔女にならない理由
・紫水晶が眠る呪いの谷で
全38ページ
サラッと読める短編集です
試し読み
百年待ちの魔女
森の奥深くにある、その小さな店は不思議なもので溢れていた。
山猫の尻尾で作られた帽子、ラピスラズリを削った笛、竜の鱗で出来た簪、異国から流れ着いた瓶詰めの船。それらが乱雑に並べられた棚に囲まれて、この店の中央には主人が座る椅子がポツンとひとつ飾られていた。
誰もいない。
時間を忘れそうな穏やかな匂いが店内には漂っている。
その時「いらっしゃいませ」と控えめな声が聞こえてきた。
「魔女だ」
少年は、声になりかけた言葉を飲み込んで、部屋につながる扉から入ってきた店主を見つめていた。
内心の緊張が現実になってしまったのだろうか、深い海の底のような雰囲気を携えて、魔女はゆっくりと・・・
》》 もっと読みたい
魔女集会で会いましょう
真夜中の鐘が鳴り響く頃、ガヤガヤと騒がしい声が大きな広間に集まってくる。
ペアの出席が必須条件とされる珍しい夜会では、誰もが”数年前に拾った自分とは別の種族”を連れて出席していた。それはいま、到着したばかりの彼女たちにも当てはまること。
カツン。と、細いヒールを鳴らして、しなやかに巻いた金色の髪を揺らしながら女は左右に視線を走らせる。
「あなたを拾ってもう二十三年になるのね。早いものだわ。前の魔女集会では単身で参加できなかった私が、今回はあなたと一緒に参加するものだから、ミラルダったら血相を変えて見送ってくれたわね」
クスリと笑う形にいい唇は、赤い果実の色に染まっている。
美麗な青年にエスコートされたその姿は、高貴な身分かのようにザワつく周囲に一滴の波紋を落としていた。
「ほら、みんなあなたを見ているわよ」
「セイラ様を見ているんですよ」
今にもダンスを踊りだしそうなほど優雅に会場の中心へと足を進めながら・・・
》》 もっと読みたい
喫茶店で冷めないコーヒーを
永遠に冷めないコーヒーなんてこの世にはない。時間がたてば自然に湯気は消え、カップの中味を飲み干すころには最初の熱さなんて忘れている。そんなものだ。それが疑うことのない常識であり、人間の日常。
「こ、ここかな?」
地図に乗ってる場所と今の位置を確認する。
喫茶「マドモアゼル」
いかにも古めかしい外観だが、美味しそうなコーヒーの引き立つ匂いは外にまでその魅力を放っている。
「いらっしゃいませ」
カランカランと、どこか胸の落ち着く呼び鈴が店内に鳴り響き、カウンターにいた女性が落ち着いた声で入ってきたばかりの客を出迎えた。いや、正確には客ではない。
「あ、あの」
たどたどしい口調で、青年は店内に足を踏み入れる。再び、カランカランと心地いい音を響かせながらドアは閉まっていった。
「ああ、・・・
》》 もっと読みたい
見習い魔女の秘密のレシピ
薄暗い室内でゴリゴリと不気味な音が響いている。臨時休業中の魔法堂の奥。向かい合わせの扉にそれぞれ「取込中」と書かれた札がかかっているが、その部屋の持ち主の一人。見習い魔女の片割れは、何やらぶつぶつ呟きながら、机の上で一心にすり鉢を動かしていた。
「竜のしっぽの鱗を六枚」
丁寧に数えてすり鉢に入れた竜の鱗は、先程から時間をかけていただけあって、さらさらと粉砂糖のような細かさを刻んでいる。
「で、次はなんだっけ」
汗をぬぐいながら走り書きのレシピに目を通すと、そこには汚い文字でこう書かれていた・・・
》》 もっと読みたい
閉じ込めたいほど愛している
街のシンボルとなっている大聖堂は、一ヶ月前から物々しい雰囲気に包まれていた。
歴史ある造形美の中で奏でられる讃美歌は聞こえず、祈りのために足を運ぶ顔は少ない。時折、扉を開けて足を踏み入れるものは、きまって初老の男ばかりだった。
教会ばかりではない。
街を見渡してみても歩いている人は少なく、女の姿はどこにもない。それこど、幼いこどもから老婆まで幅広く見ることが出来ない。あれだけ女性たちの声が明るく響いていた活気ある街は、この一ヶ月でものの見事に別の街へと変貌を遂げていた。
「司祭様はまだエルを探しているのかい?」
「ああ、なんでも今度はエフタ村で見かけたってことで、今、村を丸焼きにしに行ってるって話だ」
「だが、エルは城に行ってるんじゃないのかい?」
「司祭様は誰の言うことも聞きゃしないよ。それに・・・
》》 もっと読みたい
魔女になりたい男の子
街路樹が立ち並ぶ閑静な住宅街。目の前の道路へとつながる階段はアスファルト続きで、お洒落な景観を保った家の外壁は新築のよう。いつ、誰がきてもお世辞ではない一言が飛んでくる。
「まあ、本当にきれいにしているのね」
今日も例外なく、家にやってきた近所のおばさんの声を聞いて、マイケルは二階の廊下から吹き抜けになった玄関を見下ろす。くるりと家の中を見渡した後、マイケルを見つけた近所のおばさんはにこやかに手を振ってから、奥から走ってきたマイケルの母に回覧板を渡していた。
実際には、それを口実にした雑談会。
「まーた、何時間も玄関で喋るつもりだよ」
マイケルは相棒のティディベアに向かって話しかける。
もちろんティディベアはマイケルの言葉に、何とも言えない愛くるしい表情でしか答えないが・・・
》》 もっと読みたい
私が魔女にならない理由
良く晴れた午後の昼下がり。ナンリャスカ通り三番地。
古いながらも石造りで可愛いアパートが立ち並ぶ一角は、彼女のお気に入りの場所だった。近所でも有名な容姿は、黒い髪に翡翠の瞳。誰もが美人だと開口一番に顔をほころばせるが、彼女自身はさも当然と言わんばかりに小さく鼻を鳴らすだけ。そんな彼女が眼下に眺める街角は、昨日と同じように慌ただしく動いているが、空を仰ぎ見ることのできる屋根の上では、呑気な風がサワサワと頬を撫でるのを感じることができた。
「あら、あなた見かけない顔ね?」
特等席だと自負していた屋根の上に、見かけない顔がやってくる。
無言で隣に腰かけられたことにムッとしたのか、黒い瞳をわずかに細めて彼女は茶色の毛をした猫を見つめる。
「ここは私のお気に入りの場所なの」
遠回しに一人にしてほしいと訴えてみるも、茶色の猫は見つめ返してくるだけで何も言わない。そこで彼女は、ますますムッとした顔になり宝石のような翡翠の瞳で・・・
》》 もっと読みたい
紫水晶が眠る呪いの谷で
呪い。
それは魔女自身にも起こりうる悲劇だということを忘れてはならない。
魔女の世界で有名な詩人ポエトリー・マリエンサーが残した言葉は、枯れた大地に切り込みをいれたような深い谷底に住む女を表現するのにピッタリの言葉だった。
彼女の名前をリリーナ。
白い肌に長い白髪が美しく、四十年前の彼女の二つ名は「谷の精霊」だということを忘れてはならない。
「おはよう、イリアス」
鈴の音が響くような声が、今日も決まった時刻に谷底から聞こえてくる。
リリーナの白い髪が紫色に染まるほどの石群の中、少し物憂げにかげった彼女の顔にイリアスと呼ばれた青年の姿が移り込む。黒い髪に黒い瞳。リリーナと正反対の容姿を持つ青年は、悲壮な表情のまま口を開けて固まっていた。
「気分はどう?」
イリアスは何も答えない。
いや、答えられるはずもなかった。
リリーナは紫水晶に閉じ込められた青年を見て・・・
》》 もっと読みたい
新刊販売記念
オリジナル缶バッチ
「ありふれた魔女たちの日常」の表紙を飾る魔女モチーフのロゴが缶バッチになりました。ホワイトとブラックの二色が可愛い!!新刊販売にあわせて作られたオリジナル缶バッチです
》》 購入する
》》 公式ショップで他のアイテムを見る
》》 BOOTH店はこちら