十六夜の帝王
暗い闇の中で神々しく煌く月を携えながら、彼はひとりそっと口を歪める。
闇に溶け込んだ黒い顔で吐き出された息の重さに、思わず彼を崇めていた足達が一歩さがった。
「待ちくたびれたぞ。」
その瞬間、闇は影となり地に足をおとす。誰もいない虚無の支配者のように。
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ツイッターの「#140文字小説」に投稿した内容を深掘りするコーナー
タイトル『十六夜の帝王』
こんにちは、これだけ月が綺麗な日なのでって、今は昼ですが、月にちなんだ作品をあげてみます。
舞台設定はそうですね、どこか海沿いのさびれた倉庫ってところでしょうか。
積み上げられたコンテナの上に、月をバックに立っている男が一人。
相手は最強にして最後のボス。
彼はずっと、ここで主人公たちがたどり着くのを待っていました。
けれど、それをあざ笑うかのように、彼は優雅にコンテナから飛び降り、地に足をつけます。
彼を倒そうとここまでやってきた主人公たちは一切身動きが取れず、ただその様子を見つめているだけ。
悔しいとか、恐れとかいうよりも、まずはそのスムーズな身のこなしと、あまりに自然すぎる帝王たる雰囲気にのまれて反応が出来ないといったところでしょうか。
カッコいい。
敵の心情にすくう闇が見えると、思わず見惚れてしまうのですが、その闇を一緒に壊して、光の指すほうはこっちだと教えてあげたくなります。
敵役が強くて、孤独で、イケメンであればクライマックスは盛り上げります。
(私だけかもしれませんが・・・)
「思わず彼を崇めていた足達」
あえて複数系にしたのと、崇めていたというフレーズをつかうことで、昔に何かあったのかと因果関係をにおわす言い回しにしてみました。
ドラマティックじゃないですか。
こういう何か、最強の魔人を孤独に追い詰めた過去があるって。
主人公たちには、それを知っているからこそ、立ち向かえる強さがあるんですよね。
バトルものが書きたくなってきました。
戦争関連の作品は好きではないのですが、人が死なない対決・対峙ものはいつか本格的に書いてみたいと思います。
そんなこんなで、今回は満月の美しさに目を奪われる怖さをそのままダークファンタジー調に表してみました。
月ってすごく魅力的で大好きですが、同時に怖くなるときもあります。
闇の中で輝き続ける満月の光は、本当に狼じゃなくても変身できてしまうんじゃないかと思えるほどのパワーを感じます。
ぜひ、月光浴をお勧めしたいです。