薄桜鬼10周年記念 その肆「藤堂平助」

はじめに

ここでは、オトメイト様より発売中の「薄桜鬼」をもとに小説を作成しています。アニメ版薄桜鬼やファンソフトは未playなため原作寄りです。
版権の二次小説に関しては著作権はゲーム会社にありますが、文章及び、表現内容に関しては当サイト管理者である皐月うしこにあります。リクエスト等は受け付けてません、キャラ違い等の苦情も一切受け付けませんので、ご理解下さい。
基本的に千鶴総受けですが、甘さは濃くありませんので、濃厚な内容をお求めのかたは戻られることをオススメします。

名前変換もありません。

とにかく、趣味の範囲で作成してますので、ご理解お願いします。

小説:君が笑顔でいてくれるなら

視点: 藤堂 平助

──俺は、千鶴が好きだ。

この気持ちは、誰にも負けねぇ自信がある。だけど、俺はまだまだガキだから…

「あれ?平助くん?」
「えっ?あっ千鶴」

名前を呼ばれて振り返れば縁側に腰かけて見上げてくる千鶴がいた。俺としたことが…千鶴のことを考えながら、目の前の千鶴に気づかないんじゃ、本末転倒じゃん。

「はぁ」
「どうしたの?何か悩み事?」

自分の不甲斐なさに肩を落とせば、心配そうに千鶴が訪ねてくる。千鶴のことで悩んでるなんて、言えるわけねぇじゃん。こういう時、なんて返せばいいのかな…悩む俺をよそに、「私で良ければ、話しくらい聞くよ」と、千鶴は笑う。

「可愛いよなぁ…」
「えっ?」
「いや、なんでもねぇっ」

危ない危ない。
思わず口から出ちまったじゃんか。
焦って首をふったおれに、首を傾げる千鶴。ヤバい…見上げながら首を傾げるとか…可愛いすぎるんですけど…だけど、当の本人は何を思ったのか急に悲しそうにうつむいた。

「なっ、何かあったのか!?」

焦った俺に返ってきた千鶴の答えは、「私じゃ、やっぱり平助くんのお役になんて、たてないよね」だったから、ますます焦る。そんなこと言われたら期待するんだけど!
……じゃなくて!

「そ…そんなことねぇよ」
「でも…」
「千鶴には、いっつも元気もらってるって」
「そう?」
「そぅそぅ。もう居てくれるだけで、パァってなるっつうか、なんての?落ち着くんだよなっ」

焦ったのを誤魔化すように喋ってみたけど…勢いにのって、凄いこと口走っちゃったじゃん!多分俺、今、顔赤いかも…だけど、千鶴は気付かないのか気にしないのか「ありがとう」って笑う顔が、少し赤くって。
俺と同じで…。

「千鶴には、かなわねぇよなぁ」

そう言いながら、千鶴の隣に腰をおろす。

「えっ?」

首を傾げる千鶴が、可愛くて可愛くて、気付けばこんな質問をしていた。

「なぁ、千鶴は俺のことどう思う?」
「えっ?どうって?」
「いや、だからさ…その…」

男として。
そんなの聞かなくたって答えは、わかってる。俺は、佐之さんみたいに包んでやれねぇし、新八っつぁんみてぇに真っ直ぐ突っ走れねぇ。総司みたいに強くねぇけど、一君みたいに気を使えるわけでもなくって…もちろん土方さんなんか、手も足もでねぇ。
全てにおいて、俺は中途半端でガキだから。

「やっぱ、さっきの質問なしにしてくれないかな」

って、言おうとしたのに…「平助くんは、かっこいいよ」って笑う千鶴に固まった。

「お世辞は、いいって」

自嘲気味に笑う俺にふるふると千鶴は首をふった。

「平助くんは、かっこいいよ。いつも明るくって、私、平助くんに元気もらってるよ」
「ま…まじで?」

実は違う!なんて千鶴は言わないけど、確かめずにはいられない。
嬉しくて、嬉しくて。
俺でも何か千鶴にしてあげられているのかなって思えた。

「俺も」
「えっ?」
「千鶴が笑顔だと、元気でる」

舞い上がって、言っちゃったけど、本当のことだから、いいよな?

「ありがとう」

照れたように笑う千鶴が、やっぱり可愛いと思う。

──俺は、千鶴が好きだ。

改めて思う。
いつからか、どうしてか理由は、わからない。だけど千鶴が笑顔でいてくれたら嬉しい。落ち込んでたら、元気付けてあげたいと思う。

ほっとけねぇ。

そんな気持ちは、初めてで、伸ばしかけた手が千鶴を捕まえる前に千鶴は、立ち上がった。

「平助くん。私、行かなきゃ」
「あぁ。うん」

じゃあな。行き場の無くなった手を握りしめれば、俺はガックリと肩を落とした。いつか、ああして本当に手の届かない所に行っちゃうのかな。俺じゃないだれかと…でも、それでも千鶴が笑っていられるのなら、その日がくるまで、俺は千鶴の傍で笑っていたい。

そう思った。

千鶴が俺の笑顔で元気が出るのなら。
俺だって、千鶴には笑っていてほしいから。

「いい天気だよなぁ」

千鶴がいつもそうしてるように、ボーっと空を見上げてみれば、ふわふわした雲が浮かんでいた。

千鶴みたいだ。

真っ白でふわふわで…

──手に届かない。

捕まえたくて伸ばした腕を見れば、

「よぉ平助、なにやってんだ?」
「暇ならちょっと付き合え」
「新八っつぁんと佐之さんか…」

見知った顔にため息が出た。

「なんだ、なんだぁ。平助!俺様にため息吐くなんざぁ、百年早いんだよ」
「うるさいなぁ。もぅ」

新八っつぁんの言葉にふてくされる俺を左之さんは苦笑する。

「いつか絶対、勝ってやるからなぁ」
「おっ。平助!俺様とやり合おうってのか?のぞむところだ。かかってきやがれ」
「おい、おい、おい。何してんだよ」

いつもの日常。
だけど、いつかは俺が大人になって、君を迎えにいくから。

《完》

あとがき

純粋で可愛い。どうしましょう。四本目にして、もうあとがきらしいあとがきが書けなくなってきました。まあ、無理矢理書いてもあれなので、みなさまが楽しんでくれればそれでよきです。笑