薄桜鬼10周年記念 その伍「原田左之助」
はじめに
ここでは、オトメイト様より発売中の「薄桜鬼」をもとに小説を作成しています。アニメ版薄桜鬼やファンソフトは未playなため原作寄りです。
版権の二次小説に関しては著作権はゲーム会社にありますが、文章及び、表現内容に関しては当サイト管理者である皐月うしこにあります。リクエスト等は受け付けてません、キャラ違い等の苦情も一切受け付けませんので、ご理解下さい。
基本的に千鶴総受けですが、甘さは濃くありませんので、濃厚な内容をお求めのかたは戻られることをオススメします。
名前変換もありません。
とにかく、趣味の範囲で作成してますので、ご理解お願いします。
小説:眠り姫へ
視点:原田 左之助
目が覚めて驚いた。
「なんで千鶴が隣で寝てるんだ?」
もしかして、無意識に手を出したとか。いや、まて、俺。いくら酒に飲まれようと、それは絶対にありえねぇ。
「っていうか、酒飲んでねぇし」
最近は、気が抜けない毎日のせいで昔みたいに飲みつぶれるまでどころか、たしなむことすらしてねぇのに。じゃあ一体なんで、こんなことに…
「ぐぉぉぉ。新八っつぁん、それは俺のおかずぅ~」
……そうか。
平助の寝言で思い出した。
新八のやろうが羅刹になったばかりの平助を無理矢理連れてきて、千鶴がそれを聞いて覗きにきたんだ。
そう。
俺の部屋に。
「無防備すぎだろ」
スヤスヤと寝息をたてる千鶴を見れば、思わず苦笑するしかなく、それと同時に男として見られていないのかと軽くへこんだ。年が離れているせいか、千鶴にとって俺は”兄”という位置でしかないんだろうな。
そう思うと、平助が羨ましい。
ゲシっと眠る平助を足でつつけば、「千鶴、好きだぁ」と、俺の足に抱きつく。
「おい、こら」
てめぇは、どんな夢みてんだよ。
幸せなやつだな。
いや、そうでもねぇか。
平助は、羅刹になっちまった。
千鶴は、自分に責任を感じてるみたいだが、薬に手を伸ばしたのは平助自身だ。新八は、羅刹がどうこうと不満を抱いているが、こうして変わらない平助を見ると昔みたいにつるむ姿は変わらない。
「どこで、変わっちまったんだろうな」
おもわずこぼれた言葉に答えるものはいない。
「いつまで俺の足に抱きついてやがる」
と、平助を振り払ってみてもゴロンと寝返りを打っただけだった。
羅刹になると昼間は起きてるのが辛いらしいからな。
「仕方ねぇなぁ」
千鶴のために平助が無理して起きてるのには気付いてた。うつらうつらし始めた平助をクスクスと笑っていた千鶴もいつの間にか寝息をたてていた時は、思わず笑った。巡察に行ってくるわと新八が俺の部屋を出て、話し相手もいなくなった俺は、千鶴の寝顔を眺めながら寝ちまったらしい。
「まぁ、そんなに時間もたってねぇだろ」
そういって、身体を起こそうとした時だった。
「ごめんなさい」
……。
「お前にそんな風に言われても平助は喜ばねぇよ」
──俺だってそうだ。
もし、どうしても薬に手を伸ばさなけりゃならねぇ場面がきても。
それは、俺の意思だ。
千鶴が気負うことじゃねぇ。
「泣かしたくねぇのに、泣かしちまうってのが男ってやつなのかもな」
自嘲気味に声がもれた。
幸せにしてやりたくても、出来ない。
「俺は、贅沢なのか?」
隣で寝息をたてる千鶴をみて、そう問わずにはいられなかった。こうして惚れた女とゆっくりと時間を過ごして、惚れた女のために生きる。
「守ってやりたいって思うやつを守るってのが、なんでこんなに難しいんだろうな」
ただ守ってやりたいだけなのに、今の俺には抱き締めてやれる腕もねえのか……。
「まだまだ、俺もガキだな」
そう言った時だった。
「少しよろしいですか?」
「山南さんか?」
声の調子からわかったが、山南さんが襖をあけた。
「おや」
意外そうに見開かれた目は、確実に千鶴を見てるが、さすがは山南さんと言ったところか、何事もなかったかのように笑みをむけると、「抜け駆けは、いけませんよ」と言った。
ぬ……抜け駆け?
おいおい。
俺の顔がひくついてたに違いねぇ。
山南さんは、満足したように笑ってから、平助を見て苦笑した。
「もう少し、幸せな夢を見させてあげたいのですが」
さっきの寝言から察するに千鶴の夢でも見てるんだろう、見てるこっちまでが幸せになれるくらい平助は笑ってる。
「っっ!?」
「起きたか?平助。時間だとよ」
俺の蹴りで跳ね起きた平助にそう言ってやれば、平助は山南さんの姿をとらえて慌てて出ていった。あいつ、絶対寝惚けてやがるな。山南さんも平助の行動を笑顔で見送ってるあたり、そう思ってるに違いないんだろうが、「雪村くんも幸せそうですね」と、千鶴を最後に見た瞳は、ひどく冷たかった。
山南さんは、千鶴の血を欲しがってる。
だが、渡すつもりはない。
それは、皆が一致するところだ。
俺がなんとかしてやるっていいたいどころだが、現状を考えるとどうしようもない…なあ、千鶴。お前は”俺に”守られたいか?
千鶴の寝顔を見てるうちにそんな問いが頭にまいた。
お前の気持ちを無視するような野暮なやつにはなりたくない。だけど、同時に力ずくでも自分のものにしたいと思う。
「俺は、完全に惚れちまってるな」
思わずこぼれた笑みのまま、そっと千鶴に手を伸ばす。
「ぐぅ」
……。
「……ぶっ」
ここで普通イビキかくかよ。まあ、それだけ疲れてるんだろうな。こいつは何でも一人で気負いすぎだ。素直に甘える方法も知らないんだろうけどな。
「千鶴ぅ~。イビキかいてるぜ」
鼻をつまんでやれば、「んもぅ」ゴロンと寝返りをうつ。
「んなに、無防備だと襲われるぞ」
例えば……俺とか?
「ぐぅ」
「……ぶはっ」
「ん……っ、は……はら……原田さん!?」
「よお、起きたか?」
正確には、起こしちまったんだが、赤くなってうろたえるあたり現状が理解できてねえな。
「ど…どうして…」
「ん?」
経緯を説明すれば、千鶴はホッと胸をなでおろす。
「なんだ?俺は、そんなに信用されてないのかよ」
やばっ。
ちょっと、嫌味っぽいか?
「あっいえ……無意識の内に原田さんのところに来てしまったかと」
「……えっ?」
「はっ!? ち……違うんですぅぅ」
「おっおい、千鶴……いっちまったか…」
じゃねえ!
無意識ってなんだ!?
何が違うんだよ!?
気になるのに追うことが出来ない。
──想像してる答えが返ってこなかったら……いや。やっぱ行くべきだろうな。
千鶴。
お前は、”俺に”守らせてくれるか?
《完》
あとがき
こうして昔の小説を再度読み直していると、懐かしさがこみ上げてきます。そして猛烈に書き直したい。ですが二次創作の大変なところは、すでに原作がぼんやりとモヤがかるようになってしまうと編集が難しいところでしょうか。当時の伝えたかった物語が変わってしまう気がして、どうにも手が出せません。読みにくさはご愛敬ということで。まあ、今も大して進歩していないんですけどね・・・