/* ピンタレスト用 */

メディアワークス文庫から出版されている「浅葉なつ」著者の「神様の御用人7」を読みました。
古事記や日本書紀を由来とするファンタジーのお話ですが、このシリーズ、私めっちゃ好きなんです。

今日、ようやく読み終わりました ...

しとしとと雨のカーテンに包まれた先で浮かぶ黒い衣。目深にかぶったフードの中の顔は見えない。
だが、冷笑に歪んだその唇がわずかに楽しみを含ませた。

「やっと見つけた。」

灰色に包まれた世界で、男は一人。 ...

追い詰めた先で交わる閃光。
数ミリまで迫った鋭利な視線に犯されて、少女の喉が思わずゴクリと音を立てた。

「二度と俺の前に現れるな。」

最後の選択が決められない。
その瞳の奥に隠された悲しみが、こ ...

眠る少女の傍らで、嫉妬にまみれた瞳が熱に揺られて怪しく光っていた。

「お嬢様。本当はずっとお慕いしております。」

鋭い眼差しと、優しい声。そっと口づけられた唇の重なりは月さえ知らない。
明日もまた、日常 ...

パタンと、男は読んでいた本を閉じて、形のいい唇をそっと押し上げた。

「よく頑張りましたね。」

音楽が聞こえてくる。
何度も繰り返し練習してきたその音が、今日は心なしか弾んでいる。

「とても素 ...


広がった雲に遅れて、一人ぼっちの羊が空をかけていく。

「早くおいで。」

必死に手を伸ばしてたどり着く前に、彼らは形を変えて先へと進んでいく。
泣き出しそうな羊に、優しい風が言った。

「大丈夫 ...

手をこすり合わせて組み合わせる頃、視界にうつるブーツの先端。

「遅くなってごめん。」

吐く息につられて顔をあげると、照らされた瞳の中にうつる光の渦がキラキラと輝いて、彼はそっと微笑んだ。

「おかえり ...

男は一人、白煙を見つめていた。

「こうしている間にも貴方は忘れてしまうのでしょう。私と過ごした日々を私との記憶を。」

夢の中で悲しそうに微笑むその顔を思い出せない。手を伸ばせば消えてしまう幻影に胸が痛むのはきっ ...

しとしとと小雨が降り続いている。緑の森も濃厚な息を吐き出すように白濁の色に染まっていた。

「今日はよく冷えますね。」

優しい声が熱に溶けて消える。

「そこにいては風邪を召されますよ。」

...

ふと窓の外を見上げる。
空はどんよりと曇り、いつしか雨が降り始めていた。

「・・・あぁ。」

その美麗な顔を綻ばせて彼は瞳をふせ、形のいい唇でそっと息を吐いた。

「ようやくお越しくださいました ...